アナウンサーとCA。二つのキャリアの“ビター”な瞬間から石田紗英子さんが編み出した、トラブル切り抜け術。
「キャラメライフ」のプロダクトをこよなく愛する憧れの人にインタビューするこちらの連載。第5回目からは、フリーアナウンサーの石田紗英子さんに語り手をバトンタッチする。まずはキャラメルのほろ苦さに関連づけ、人生の“ビター”な瞬間について聞いてみた。キャリアを重ねる過程で犯してしまった、意外なミスとその対処法とは!?
──キャリアの前半はCA、そして現在はフリーアナウンサーの傍らマナー講師なども務める、“知的美女”の代表格である石田さん。透明感のある優しい笑顔が素敵で、世の中のマイナスな事柄との関わりは皆無に見えますが……緊張感に満ちた現場などのご経験もおありでしょうか?
石田:はい、よくありますよ。私個人としては、基本的にイヤなことや辛いことがあってもすぐに忘れてしまうタイプ。わりと前を向いているほうかな、とは思います。でも、人生を振り返ってみると、世の中の“酸いも甘いも”の“酸い”の部分を、たくさん経験してきています!(笑) とくにキャリアにおいては、ビターな経験もたくさん。
例えば、私が就職活動をしたのは、ちょうど超就職氷河期の時期で。幼い頃からの夢でCAを目指していましたが、私が大学を卒業する年はそもそも採用自体がなかったんです。それでもどうしてもCAになりたかったので、別の仕事に就き、時期を見て転職。
そこからCAの経験を積んでいたのですが、あるとき思い立ってお天気キャスターのオーディションを受け、幸運にも採用していただくことに。その後フリーアナウンサーになって上京した当初は、料亭でお皿洗いのアルバイトをしながら働きました。
私の場合は幸か不幸か、お仕事の採用が先に決まったので、アナウンサーとしての基礎的な知識が身についていなくて……。毎日働き、現場でダメ出しもされながら、アナウンサースクールを2つ掛け持ちして座学に励みました。朝、午後、夜中のお仕事が続いて、2カ月間休みなしで働きどおしだったことも。今では、すべて自分を高めるための訓練だったと思えますけどね。
──壮絶な生活ですね! それが“訓練だった”と思えるマインドの強さにもびっくりします。
石田:CAもアナウンサーも違った職種でありながら、どちらも緊張感のある現場がともなう職業。だから、自然と度胸が培われたのかもしれませんね。CAだとどうしても、フライト中に急病人が出るとか、シートベルトを締めないお客さまや泣きわめくお子さまの対処をしなくてはならない場面が。それをコックピットに頼らず自分たちだけで解決する経験を、20代の頃から積んできました。
アナウンサーになってからも、生放送や配信の最中に、電波障害や地震にみまわれたり。どんなハプニングが起こっても落ち着いて対応する場面には、多く接してきたと感じます。
でも人生最大のミスは……CA時代に、同乗しなければならなかった移動用の飛行機に乗り遅れたこと(笑)。これは緊張した現場とかではなく、ただ時間を勘違いしていて。放送で呼ばれているのにずっと気付かず、空港でお茶していたんです! 判明したときは、人生でこれまでにないくらい血の気がサーッと引きました……。
──聞いているだけでもドキドキします(笑)。ただ、どんな仕事にもミスはつきもの。そんな大失敗から立ち直る際や、緊張した現場への対処法などは、何かありますか?
石田:何事にも落ち着いて対処する私なりのコツは、客観視すること。生放送中に地震が起きても、自分が怖がると、テレビの向こうの人たちはもっと怖くなりますから。心の中で焦りや緊張はしますが、そんなときこそちょっと遠くのほうから自分を観察するんです。置かれた状況をゆっくり捉えなおすと、おのずと心が落ち着いてきますよ。
あとはオリジナルな方法ではありますが、目を閉じて高鳴る自分の鼓動に意識を向け、ゆっくり息をするのもおすすめ。緊張すると、ドキドキしますよね? それを無理に忘れようとしてもできないから、あえてそっちに意識を向けて集中するんです。そうしたら、徐々に落ち着けるはず。
──マインドフルネスや瞑想に近い方法ですね。それをご自分で編み出されたとは、すごいです!
次回は石田さんの“スイート”な時間について、お伺いします。
石田紗英子
フリーアナウンサー、マナー講師。JALグループ客室乗務員を経て、2005年フリーアナウンサーに転身。経済番組や情報番組等、さまざまなメディアにレギュラー出演し、約1000人のインタビューを担当した。また全国の企業・学校において、マナーやコミュニケーションの講師活動を行う。1児の母。
衣装撮影協力: Avie (@avie_andensal/アネンサール 03-6786-9267)
Edit: Satoshi Nakamoto
Photos & Video: Kazumasa Kawasaki
Text: Misaki Yamashita