大草直子さんが教えてくれた、日々の“スイート”な喜びを倍増する秘訣とは。
「キャラメライフ」のプロダクトをこよなく愛する憧れの人にインタビューするコラム連載の第2回。
引き続き、スタイリングディレクターの大草直子さんに、今回は人生の“スイート”な瞬間について聞いてみた。
キャラメルみたいに甘い喜びを、彼女はどんなときに味わい、噛みしめ、自身の糧としているのだろう?
──前回は、人生の“ビター”な局面とその対処法について語ってくれた大草さん。反対に“スイート”な喜びを感じるシチュエーションは、どんなときが多いですか?
大草:仕事では本当にさまざまな人やチームと関わるので、ひとつひとつのプロジェクトが望ましい結果に終わったときは素直にうれしくなります。みんなが笑顔で「よかったね」と言い合える瞬間は、まさしく私にとっての“スイート”なひととき。
だから、イベントをするにしても書籍を出版するにしても、まず仕事を依頼してくれる人の“ゴール”はどこなのかを、最初に必ず確認します。「会社の中で社長賞を獲りたい」とか、「これだけの売り上げを達成したい」など、求めるものや目標は意外と人それぞれ。みんなが十分に満足してこそ心から“スイート”な気持ちになれると思うので、明確な到達点を設けておくのは大事なことです。
いっぽう、家族との時間に関してはまったく異なり、これといったリターンがないところに“スイート”な瞬間が。ふとしたことで子どもの成長を感じたり、家族が元気で楽しくいてくれたり、一緒にごはんが食べられたり……そんな些細なことで、とっても幸せな気持ちになれます。
とはいえ、壁にぶつかる場面も多々。私なりの信念として掲げているのは、“相手を認め、そこから逃げない”ことです。子どもって、つい自分の従属物のように思ってしまいがちで、コントロールしたくなるもの。仕事をしていて他人に対してなら当たり前にできることが、家族を前にしたとたん、難しくなることもあるんですよね。子育てや家族との関係づくりは自分の努力だけでできることではないから、そこがすごく大変で、でも愛おしい部分です。
──母として、妻として、キャリアウーマンとして……日々忙しくご活躍されている大草さんですが、そんな“スイート”な瞬間の味わいをより深くする、自分へのごほうびなどは何かありますか?
大草:食べることと、お酒を飲むことですね(笑)。今はコロナ禍でなかなか難しい状況ですが、通常お酒は外でも家でも、よく嗜みますよ。“楽しい”とか“うれしい”という気持ちを高めてくれるほか、ある種の区切りをつけるというか、リセットしてくれる側面もある気がしますね。
そしておいしいものを食べることは、何より大事! つねに食べることを考えているといっても過言ではないくらい、“食”に関することが大好きです。“ここのお店のこれが食べたい”とか、“新しいレストランを開拓したい”という気持ちはないのですが、自分が今何を食べたいのかについては、いつも頭の片隅にある気がする(笑)。
──食にしろお酒にしろ、今、自分が何を求めていて、どうすれば気持ちが高まるのか知覚しておくのは、たしかに重要なことかもしれませんね。そうした“スイート”な喜びの経験は、スタイリングにも表れてくるものなのでしょうか。
大草:そうですね。私は、“おしゃれはその人の人生そのもの”だと考えています。人生が凝縮されているからこそ、ファッションには正解がなくて楽しい。例えば私自身でいうと、土台となるシンプルシックなスタイルは、幼少期にブラウンやネイビーといった色合いのグッドガールな装いをさせられて育ったことに起因するかも。
でも、どこかにインターナショナルな感じは欲しいなと考えていて、それはおそらくラテン好きの気性とか、国際結婚をしたという背景がスタイリングににじみ出ている部分なんだと思うんです。そんな“人の歴史”が垣間見えるものだから、ファッションって本当に興味深いし、大切にしたくなりますよね。
だからもちろん、日々の喜びやハッピーな感情は、その人の装いを素敵にするものだと思います。人生のいろんな局面での“スイート”な気持ちをしっかり味わってこそ、自分が心から“好き”とか“欲しい”と思うものも、おのずと洗練されていくはずです。
大草直子
1972年生まれ、東京都出身。大学卒業後、現・ハースト婦人画報社へ入社。雑誌の編集に携わった後に独立し、ファッション誌、新聞、カタログを中心にスタイリングをこなすかたわら、イベント出演や執筆業にも精力的に取り組む。
WEBマガジン「mi-mollet」のコンセプトディレクター。WEBメディア「AMARC(amarclife.com)」を主宰。インスタグラム@naokookusaも人気。近著に『飽きる勇気―好きな2割にフォーカスする生き方―(講談社)」がある。
Edit: Satoshi Nakamoto
Photos & Video: Kazumasa Kawasaki
Text: Misaki Yamashita